白紙委任状の怖さ

「白紙委任状に印鑑を捺印するのは危険だ」ということは、皆さんご存じだと思います。しかし土地の地目変更や売買などの慣れない手続きを第三者(代理人)に依頼した場合に「白紙委任状に印鑑を捺印したばかりに・・・」とか「白紙委任状を信用してあずけたのに・・・」と、後悔したという例は多くあります。
「白紙委任状に印鑑を捺印し、あずける」という行為が危険だとは知りながらも、その行為にどういう意味があるのかを正しく理解していないために起こった事例です。


委任状とは、代理人に何かをしてもらう場合に、代理人が正当な代理権をもっていることを証明するためのに用意するものです。ですので代理人と取り引きする相手側も、委任状をみて信用して手続きを行ないます。委任状には代理人の名前と、委任事項(委任する事の内容)を記入して、委任を依頼する人が署名と印鑑の捺印をする決まりになっています。
白紙委任状とは、場合によって代理人の名前と、委任事項が記入されずに、委任を依頼する人の署名と印鑑の捺印のみがある委任状の事を指します。

以上から「白紙委任状をあずけた」と言う行為は、白紙委任状を受け取った人が「代理人の名前と、委任事項をあとから書き入れる事を承知した」という事になります。白紙委任状を受け取った人が依頼したとおりの内容を書き入れて使う場合には、何も問題はありませんが、依頼した内容と異なる内容を書き込まれ使用され、大きな不利益を受けると事例があります。


良く白紙委任状を悪用される例として
Aさん(あなた)がBさんの土地を買う事を決め、手続きに不慣れなので、代理人Zさんに白紙委任状と印鑑証明書を渡した。
代理人ZさんはAさん(あなた)に無断で白紙委任状に「Aさん(あなた)の買った土地の売却を委任する」と委任事項に書き込み、Bさんから買った土地をCさんに売却してしまい、移転登記も済ませてしまった。売却して受け取ったお金も代理人Zさんが使ってしまった。

この話の場合、Aさん(あなた)が事情を知り、Cさんに「代理人Zさんが白紙委任状を悪用したので土地を売却する気はなかった」と取り引きの無効を申し立てしても、Cさんは「Aさん(あなた)の実印が押してある委任状と印鑑証明書をもつ代理人Zさんを信じた」と主張されると、Cさんに落ち度はありません。「代理人Zさんが白紙委任状に勝手に委任事項を記入した事をCさんが知っていた」場合を除いては、裁判になっても土地を取り戻す事はできません。

このように、信用している人にでも、白紙委任状をあずけるという行為は、非常に危険な行為です。代理人に何かを依頼する時は、委任状に「代理人の名前と、委任事項の記入」をして、内容を良く確認してから、あずけるようにしましょう。



白紙委任状を安心してあずけられるケース

「白紙委任状は危険だ」とお知らせしてきましたが、白紙委任状をあずけなければ用が足りないという例もあります。司法書士や弁護士の先生に代理人を依頼する場合、先生の方から説明があり、委任状の文面を確認してから署名と印鑑の捺印をする事の方が多いようですが、何かの理由により、委任事項の項目に何を記入して良いか分らず、後で司法書士や弁護士の先生に書き入れて頂いた方が誤りがなく円滑に事を運べるような場合、白紙委任状をあずけるといったこともあるようです。
上記のように、何らかの手続き代行を職業として行なっている人(会社)に代理人を依頼する場合は、失職の危険を冒してまで白紙委任状を悪用しすることは、まず考えられませんので、安心してあずける事ができます。

日時:2009年4月 9日 11:30


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