借家契約上の念書の効力

借家契約のなかで、トラブルになりやすいのが、契約期間が満了したときの明け渡しの問題です。
借家契約書に署名と印鑑の捺印をして契約をするのですが、通常に市販されている借家契約書には、家を借りる人にとって、不利な特約が書かれています。しかし、その不利な特約はほとんど効力を持たないことが多くあります。
「借家料金の支払いが一度でも遅れた場合は、契約を解除する」と言うような特約は、法律的にはまったくといって良いほど無効になります。
賃貸契約書以外に「○年△月◇日で明け渡す」という念書を取り交わしていた場合はどうなるのでしょうか?


借家契約の明け渡しについて、署名や印鑑の捺印をして念書を取り交わす場合は、大きくふたつに分ける事ができます。
◆家主側に正当な理由がある場合
家主が借家をつかう必要が生じた、借家が老朽化して建て替えを行なう、などの事情がある場合
◆家主側に特別な理由がない場合
家主から契約期限がきたので、催促され念書を書いてしまったという場合

念書とは、書いた本人の約束を記したものですので、通常は念書の内容通り実行しなければなりませんが、書いた本人の意志が変り、念書の内容が守れないときに、強制的に念書の内容を実行できるかには問題があります。この場合の「強制的」というのは、暴力行為での立ち退きではなく、裁判所へかけ合い念書の内容を実行させるという事です。裁判所では家主に正当な理由がある場合は念書の効力を認めるでしょうが、正当な理由が無い場合は効力をなかなか認めてくれないでしょう。

家主側はどうしたら借家人に明け渡しの念書を実行できるのでしょうか?
当事者同士では解決ができない場合は、弁護士などに相談するようになりますが、家主側の明け渡し条件に金銭的な条件(立ち退きに対する補償金など)を加えて、念書を書いてもらうようにするのが一般的です。

このような借家に対するトラブルでは、念書のみで済ませることはほとんどなく、和解契約書を作成して、和解金の額面や、支払い条件(例:和解契約した時点で半額、明け渡しの時点で残金)、明け渡しまでの借家料金、など当事者または代理人で条件を話し合い、双方が署名と印鑑の捺印をしておきます。

トラブルの内容が複雑なときは、念書一枚で解決にはならない場合が多いです。

日時:2009年8月10日 11:19


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