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保証人の印鑑は重大責任です。

一言に「保証人」といっても、様々な事柄での保証人があります。身元保証人、婚姻届の保証人など、その種類によって責任も変わってきます。
今回は、主債務者(お金を借りた本人)が債務を履行できなくなり、主債務者にかわって債務を履行する責任を負うことになる、金銭にかかわる保証人の印鑑についてお話しします。


主債務者が債務を履行しなかった場合、保証人にその債務の履行が請求されます。
AさんがBさんにお金を借りるとき、保証人をCさんに依頼した場合、
Aさんが主債務者
Bさんが債権者
Cさんが保証人になります。
AさんがBさんにお金を返金できなくなった場合、債権者Bさんは主債務者Aさんに代わり保証人Cさんに請求することができます。

保証人は債権者(お金を貸した人)と保証契約を結びます。法律上かならず保証契約書を作成する必要はありませんが、通常は保証契約書を作成します。金銭の貸し借りの場合、金銭消費貸借契約書に保証人として署名と印鑑の捺印をする形で作成されることが多いです。

保証人として、署名と印鑑捺印を行なった場合、どのような責任を負わなければならないのでしょうか?保証人には単純保証人と連帯保証人とがあり、どちらかによって責任の重さが変わってきます。

単純保証人とは
主債務者の債務を、債権者に対して保証する人のことです。
単純保証人は、主債務者の債務不履行によって、債権者から債務の履行を請求された場合、催告の抗弁権(「まず主債務者に催促して、それからこちらにきてくれ」という権利)があり、さらに検索の抗弁権(「主債務者には借金を弁済するだけの財産があるから、まずこれについて強制執行してくれ」と主張する権利)があります。

単純保証人の責任は、主債務者の責任に次ぐ二次的なものといってもよいでしょう。しかし、単純保証人の権利は一時的なものに過ぎないので、最終的に主債務者に支払い能力が無くなった場合、債権者の請求を拒否できるものではないので、催告の抗弁権・検索の抗弁権があったとしても、安心できる訳ではありません。


連帯保証人とは
主債務者の債務について、主債務者と同様の債務の履行を負う人のことをいいます。単純保証人のように「主債務者への催促」や「主債務者への強制執行」を主張する権利はありません。

連帯保証人の責任は、主債務者とまったく同じ責任を負う事になります。また、保証人が一人ではなく複数人の場合、単純保証人であれば、債務の額を保証人の人数で割った額のみ責任を負うことなりますが、連帯保証人の場合は保証人が何人いようと、債務の額を全額支払うことになります。「ほかにも保証人がいるから」と言われても、連帯保証人の債務の額は、主債務者とまったく変わりません。債権者にしてみれば、連帯保証人が多くいた方が、多い分だけ利益が大きくなります。

以上のように金銭の保証人になる際の印鑑捺印はとても恐ろしいものです。なるべく印鑑の捺印は避けたいですが、どうしても保証人の印鑑を押さなくてはならない場合は、契約の内容を良く確認してからにしましょう。


名目が同じ「保証人」であっても、婚姻届や離婚届にも保証人の署名と印鑑の捺印欄がありますが、この場合の保証人は、なにかの責任を負うと言うものではありません。




2009年4月28日

ニセの婚姻届でも受理されます

婚姻は民法によって
「婚姻が成立するためには、当事者の婚姻する意思がなければならない」
「婚姻は届け出によって成立する」
とあります。
婚姻する当事者に「婚姻の意思」があり「婚姻届」を役所に提出すれば、正式に結婚となります。婚姻届に捺印する印鑑は、婚姻する当事者ふたりの「意思の確認」という重要な意味を持っています


以前にも説明しましたが、婚姻届の手続きは簡単です。(参考
役場にそなえつけてある「婚姻届用紙」に必要事項を記入して、婚姻する当事者2名の署名と印鑑の捺印、保証人2名の署名と印鑑の捺印があれば受理され、届け出は本人でなくてもよい事になっています。届け出を受け付けする役所の戸籍係は、法律に定められた婚姻適齢の男性満18歳以上、女性満16歳以上か、女性については満6ヶ月の再婚禁止期間を過ぎているか、すでに法律上結婚していないか、などは調べますが、「当事者に婚姻の意思があるのか?」などの確認をおこなう事はなく自動的に婚姻届を受理してしまいます。

この制度には、なんら問題点はないようですが、実は大きな問題点があります。「当事者にとって、婚姻の意思確認という重大な意味を持つ印鑑が役所では形式的なものにすぎない」という問題です。しかも婚姻届に捺印する印鑑は、市販さえている三文判でもまったく問題なく受理されます。となりますと、相手側の住所、本籍地など婚姻届に必要なの情報さえ解れば、誰にでも婚姻届は提出できるという事になり「知らないうちに結婚していた」という可能性も十分に有り得ます。

現在このような事件を防ぐ手だてはありません。しかも、一度受理されてしまった婚姻届は、当事者、片方、双方の同意がなくニセモノであったとしても戸籍に「婚姻」の記載がされてしまうと、取消には面倒な手続きをとらなくてはなりません。



ニセの婚姻届けでも簡単に離婚はできません

知らないうちに他人と結婚させられていた場合、訂正する手続きがあります。

Ⅰ、家庭裁判所に「婚姻無効」の調停を申し立てます。この調停で、ニセの婚姻届を出した相手が無効を認め、無効の原因について争いがなければ無効になります。

Ⅱ、Ⅰの調停が上手くいかなかった場合はニセノ婚姻届を提出された「被害者」は、無断で提出した「加害者」を被告とした婚姻無効の確認の訴えを地方裁判所に対して起こさなければなりません。

※ Ⅱの場合、加害者側が控訴・上告をして争ってくる事もあります。そうなりますと、裁判には時間がかかり、被害者は長い年月を失うことになります。また、ニセの婚姻届でも、それが戸籍上に記載されている以上は、重婚になるため、正式な婚姻届は受理されません。

Ⅰで決着がついた場合「審判書謄本」を、Ⅱで決着がついた場合は「判決謄本」をそえて役所の戸籍係に訂正を申し出れば、戸籍簿から婚姻の記載が消されることになります。

※ ニセの婚姻届でも3ヶ月の間、何もせずに放っておくと、正式な婚姻として有効とされてしまいます。




2009年4月27日

受領の印鑑のない領収証

お金の支払いをした際には領収証を受け取ります。支払う側には領収証を請求する権利があり、相手側が領収書を出さない場合は、支払いを拒否する事ができます。
領収書の形式には決まりはなく、印鑑捺印、署名が無くても有効です。ただし、領収証の意味は「支払った」という証拠なので、受け取った事実、債権者・債務者の氏名、受領年月日、何の支払いか、の事柄は明らかにしておく必要があります。


領収証には印鑑、署名がなくても有効ですが、二重払いの危険を防止するための証拠としての役割から、受取人の名前が、自署ではなく記名のみで、受取人の印鑑がないものは、あとになって証拠として役に立たないおそれもありますので、領収証に印鑑の捺印があるかはしっかりと確認しなければなりません。

本人に支払いをした場合でも、受領印がなければ二重請求された場合に、トラブルの元になります。さらに、本人ではなくつかいの集金人に支払った場合には、受領の印鑑のない領収証を受け取った場合には二重払いのトラブルに巻き込まれることが大いに有り得ます。

本人ではない集金人に何かの料金を支払い、領収証を受け取り安心できるのは、集金人が本人作成の領収証を持ち、この領収証には受領の印鑑が捺印されているからです。「受領の印鑑がないものは無効」と記載されている領収証の場合、支払う側には受領の印鑑があるかを確かめる義務が発生します。その確認をせずに支払ってしまい、受領の印鑑がない領収証を受け取ってしまうと、領収証自体が無効になってしまい「支払った」事実まで無くなってしまう可能性も十分考えられます。

いつも集金に来る集金人が受領の印鑑のある領収証を持ってきて、支払いを済ませた場合、集金人に依頼した本人が「その集金人はすでに解雇していた」と言っても、受領印のある領収証があれば、支払いは有効になります。


集金の際に本人ではない集金人を無条件に信用したり、受領の権限を持っているか、領収証は正しいものか、などを支払う本人に確認する義務はないと思いがちですが、最低限、何かの支払いで領収証を受け取る際には、受領の印鑑の有無は確認する必要があります。
その確認をしないが為に、思わぬ二重払いをしなければならない事になるかもしれません。

2009年4月24日

不要な手形には印鑑を捺印しない

手形をよく振り出す事があるからと手形帳を銀行から受け取り「手形を振り出す際に印鑑の捺印をする手間を省くため」と手形帳に使う前に印鑑を捺印して保存をしておくという方もいらっしゃるのではないでしょうか?こういった行為は直ぐにやめましょう。盗難にあったとき、紛失したときに大変なことになります。


約束手形は、裏書きなどによって、次々に流通していきます。盗難された手形でも、紛失した手形でも、流通してしまえば、振出人として支払いの義務が発生してしまいます。手形は取り引きをスムーズに運ぶための手段ですので、手形の受取人は、受け取りの際に、「盗まれた手形?紛失した手形?」と確認は行ないません。

訴訟でも、「手形を流通させる意志があって手形に記名・印鑑の捺印をしておいた手形は、たとえ交付しなくてもその責任を負う」とされたようです。
「手形を流通させる意志が無く記名・印鑑の捺印をしてあった手形は、支払いの義務がない」という事になりますが、これを証明することは、不可能に近いでしょう。

以上のことから、不必要な手形用紙には印鑑の捺印をする事は、絶対にさけましょう。

2009年4月23日

拇印を押した手形は無効

約束手形の振出人欄に、記名と拇印が押されていた場合、受取人は支払いを求める事はできません。手形が有効に成立するためには、振出人の署名、または記名と印鑑の捺印が必要になります。

※ 署名とは、本人が自筆で氏名を手書きすることになります。記名とは、本人が自筆で氏名を手書きする(署名)以外の方法で氏名を記載することです。(例:他人による代筆、ゴム印を押したもの、ワープロで印刷する場合など) 振出人の欄に記名と拇印ある手形を受け取った受取人が、満期日に支払いを断られ支払い請求を求めた訴訟事例の場合、「手形の成立条件である署名は、記名と印鑑捺印で変える事ができるが、拇印は含まれない。」として、振出人の支払い責任を認めませんでした。受取人は「現在の指紋鑑定は発達しているので、印鑑捺印よりも拇印の方が信用できるのでは?また、手形の成立条件の記名、捺印の印鑑捺印は三文判でもよいとされているので、振出人が手形を振り出すつもりで拇印を押した以上、有効なのでは?」として上告しました。
判決では、「拇印(指紋)は本人を証明する確かな証拠ですが、本人のものであっても特別な鑑定をしなければならないので、本来の手形流通の意味がなくなってしまうから無効」とされました。

拇印と記名によって振り出された手形は、振出人は手形上の責任を負わないだけではなく、引き受け、裏書き、保証などすべてが無効になるようです。

2009年4月22日

社長の印鑑ある手形は会社の責任

手形が偽造された場合、被偽造者(偽造された側)は手形上の責任をおうものではない。たとえば、会社内で手形の振り出しの権限のない人が勝手に代表取締役の印鑑を捺印して、会社の名義で手形を振りだした場合、会社は手形上の責任を負わない事になります。
しかし、会社は何の責任も負わなくて済む訳ではありません。民法に「会社は被用者(会社が雇用している人)が実務の執行につき、第三者にくわえた損害を賠償すべきである」という規定があり偽造された手形でも責任を負わされることもあります。


たとえば、ある会社のAさんは会社内で手形を振り出す権利はなく、会社の印鑑を出し入れできる権利は持っていました。手形を振り出す際には社長の命を受けてAさんが手形を作成して社長に提出して、社長が会社の印鑑を捺印して振り出す。とういシステムで手形の振り出しを行なっていました。
Aさんが、社長の了承なしに手形を偽造してしまった事例の場合、「Aさんは本来、手形振出の権利はなく、その職務を逸脱して手形を偽造し、振り出ししてしまったが、手形の振り出しはAさんの職務権限内の行為と深い関係にある為、手形の受取人はその行為が偽造であったかを確認することはむずかしいので、会社は手形の受取人に対して民法上の理由から責任を負わなければならない」とされたようです。

被用者(会社が雇用している人)が手形の偽造をした場合は、つねに会社が責任を負うという事ではありませんが、手形の振り出し行為と関連性が深い人が行なった手形の偽造は会社の責任とされる場合もあります。
手形振り出しの権利、会社印鑑の使用権利は信頼できる一部の社員にのみ与える方がよいでしょう。

2009年4月21日

手形は署名と印影が一致しなくても有効

手形では「署名」と「印鑑の印影」が同じでなくても有効とされます。印鑑は行為者の印鑑として用いられたものとして捺印してあれば良いという事になります。


手形の裏書きに記名されてあった名前と、捺印されてあった印鑑の名前が違ったという事例がありました。満期になり支払場所の銀行に提示すると、「裏書人の名前と印鑑が違うので、誰の記名、印鑑捺印かわからない」ということで、支払いを拒否されてしまいました。その手形は裏書きの連続性に欠くという理由から支払いが拒否されてしまったようです。

その手形の所持者が訴訟を行なった結果、「手形行為の署名と印鑑捺印において、印鑑は記名者の名前を表示されるものとして用いられるのが通例だが、印鑑と認められるとしたものが捺印されていれば良い」ということで、所持者への支払いが確定しました。また、手形上の印鑑捺印の意義に対して「手形の記名と印鑑の捺印は、手書きの署名の場合に、その手形行為が記名によって表示された行為者の行為であるか否かの判定であるものとして存在すれば良い」と解説し、裏書きの連続性に欠いてはいないので有効としました。さらに「雅号」などを彫刻した印鑑でも有効としました。しかし、雅号や他の人が使用した印鑑での捺印があった場合、問題が起きた時に、支払いを請求する側で署名した人が行為者としてその印鑑を用いたとしての証明をしなければなりません。記名と関連の薄い印鑑ほど、証明が困難になります。法律的には有効でも、後に面倒が起こりそうな手形は受け取らない方が無難です。

※ あくまで事例としての裁判の結果になります。

※ 裏書きとは
手形を譲渡する際に手形の裏面に署名捺印して、権利を法定の方式によって他人に移転させる行為です。
また手形の振出者が支払い不能(不当たりなど)とされた場合、裏書きをした側にも支払い義務が発生します。

2009年4月20日

手形は印鑑より記名の方が優先する

一般に会社(法人)の代表者が会社(法人)の為に手形の発行をする際には、法人名の表記・代表者の役職を表記・代表者の署名(またはゴム印で名前を押して印鑑の捺印)、が必要になります。
では、約束手形の振出人としてゴム印で「会社名と個人名」が押してあり、その下に会社役職の印鑑が捺印されていた場合、約束手形の振出責任は、会社にあるのでしょうか?個人にあるのでしょうか?この手形は、代表者役職の表記がなく、会社名と個人の名前がゴム印で押してあり、会社役職の印鑑が捺印されていた手形の場合になります。

このような手形の場合、裁判では手形の振出人は、会社にあるとされるようです。手形の「代表者の役職を表記」は法律上では特別のきまりがあるわけではなく、手形上で「法人のために手形を発行する」ことが解るように記載されていればよいという事になります。この場合、会社役職の印鑑が「代表者の役職を表記」であるとされたようです。

では、捺印されていた印鑑が個人の印鑑であった場合は、振出責任は会社にあるのでしょうか?個人にあるのでしょうか?この場合裁判では、手形を所持する人の利益を保護する事から「手形の記載から振出人が個人か法人かいづれとも解釈できるような場合は、法人および代表者個人のどちらに対しても請求ができる」とされたようです。

裁判となると、手続きや裁判にかかる時間などを考えると大変なことになります。会社名の入った手形を受け取る際には、名義、役職名の表示、捺印されている印鑑などを良く注意してから受け取るようにしましょう。

2009年4月17日

約束手形に押す印鑑

約束手形とは、振出人が、受取人またはその指図人もしくは手形所持人に対し、一定の期日に一定の金額を支払うことを約束する有価証券のことになります。
法律でも「約束手形には振出人の署名がなければならない」「署名の中には記名印鑑捺印を含む」とあります。


一般的に見る事のある約束手形は、銀行との約束によって一定の用紙に統一されていますが、「約束手形」という文字、一定の金額を支払うとういう約束事、支払い期日、支払い地、支払いを受ける者の名称、手形振出日、手形振出地が記載されてあり、振出人が署名すると、どんな用紙でも約束手形になります。
この際の署名とは、当たり前ですが自分で自分の名前を書く事を指します。しかし法律では、署名に変えてゴム印で名前を押して、その下に印鑑を捺印しても構わない事になっています。署名を要求する理由は、行為者を証明する事なのですが、日本では慣例として印鑑がその役目を果たしているので、印鑑の捺印することで行為の証明としているようです。

会社の場合、会社の代表者が会社の名前と自分の肩書きと名前を書き、印鑑の捺印をして手形を振り出す事になります。会社の約束手形の印鑑は、実印(代表者印)でも角印(社印)でも構わない事になっています。
しかし、約束手形を受け取り、銀行で取り立てをしてもらう場合に、振り出した会社が銀行との契約の際に約束手形に使う印鑑として、角印(社印)を届け出ていない時は、支払いを断られてしまいます。同じように、法律上は振出人の署名のみで有効となっていますが、銀行に取り立てを依頼した場合、届出印のないものは断られてしまいます。


約束手形と現金は全く違うものです。約束手形の支払い期日に「100日以内に支払う」とあると、最長で100日間は現金化できません。その100日のうちに、振り出した会社が不当たりを出してしまいますと、ただの紙になってしまいます。小切手の場合も同じ事が言えます。
また、約束手形での支払いをされ、領収書の発行を求められた場合に、「領収いたしました」と記入しますと、不当たりがあった場合に、大問題になってしまいます。必ず、「約束手形」の表示をしておき「仮領収書」として発行をする方がよいでしょう。



2009年4月16日

市販の契約書に印鑑を押しても意味はない

何かの契約の際に、市販されている契約書用紙が使用される事があると思います。特に、建物の賃貸借契約で直接貸し主と借り主が契約を行なう場合、市販の契約書用紙を用いることが多いです。市販の契約書用紙には、いろいろな契約についての条件が印刷してあります。貸し主が借り主に署名と印鑑の捺印をしてもらうと契約が成立します。しかし、この市販の契約書に印鑑を捺印してから、あとで問題が出てくる場合が多くあります。


市販の契約書にで問題が起こった例

貸し主(家主)と借り主で、賃貸借契約をする際、契約書に署名と印鑑の捺印をしたのだが、契約書は市販されているもので、条件に「家賃を1ヶ月でも滞納した場合、催告なしに本契約は解除されるものとする」「本契約において様々な問題が起こった場合、裁判所にて審議する事に合意します」と印刷がされてあるものでした。
この内容を分りやすく説明しますと、「家賃を1度でも滞納したら、自動的に出て行ってもらいますよ」、「何かのトラブルがあった場合は裁判所での裁判で決着をつけますよ」ということになります。
しかし、貸し主(家主)は借り主に契約書に印刷してある条件についての説明を何もしませんでした。
そして借り主は数ヶ月の後、家賃を滞納してしまい貸し主(大家)は契約書を盾に、明け渡しの請求を迫りました。そして契約書の内容どおり、裁判所での裁判での決着を求めました。

この場合裁判所では、「内容が過酷であり、契約の際に貸し主(家主)が借り主に対して説明を行なわなかった」ことから明け渡しの請求を無効としました。
あくまで「説明を行なわなかった」ことが前提で、借り主に不利な条件があるらといって、必ず無効になるという事ではありません。

例のように家や部屋などを借りる場合は、賃貸借契約を結び契約書を取り交わします。通常は、貸し主(大家)や不動産屋が用意する市販の契約書に賃借料、借りる期間などを記入して、署名と印鑑の捺印をして済ます事が多いです。市販の契約書を使うと、手間がかからず便利です。しかし、その内容を良く読まずに、印鑑を押していまいトラブルになるという事があります。
市販の契約書に係わらず、何かの契約を行なう際には内容を良く確認して、署名と印鑑の捺印をしましょう。

2009年4月15日

家族が偽造した印鑑での契約は無効

以前、夫に無断で妻が夫の印鑑(実印)で印鑑証明書を取得し、夫の代理人として夫名義の土地を売却した。それを知った夫は取り引きの無効を起こす訴訟を裁判所に申し出た。という話がありました。この場合、裁判所では「土地を買った人は、夫に責任をとらせる事が出来す、売買契約が成立しない」という判決をくだしました。
通常、本人の実印と印鑑証明を持っていれば、代理人としての問題はありません。しかし家族(特に夫婦)の場合は、簡単に本人の代理人として信じるわけには行きません。他人より夫婦の方が信用できないという、特別なケースのお話です。


「土地を買った人」が夫に土地を売る意志があるのかを確認しなかったというポイントがあり、裁判所では契約が無効という判決をだしたようです。
家族(夫婦)の場合、印鑑(実印)の持ち出しや印鑑証明書の取得は簡単に行なうことができます。そのような事情から、家族や夫婦同士の代理人は法的には軽く信用してはいけないという事になります。



2009年4月13日

捨て印の怖さ

よく「捨て印」として印鑑を捺印する欄があります。皆さんはこの「捨て印」というものをしっかりと理解していますか?
捨て印とは、後でまちがいを訂正するための訂正印として必要な物になります。「さしあたり訂正する箇所はないですが、訂正する必要があったときのために、あらかじめ押しておく印鑑」になります。


何かの契約書に署名と印鑑の捺印をする際に、この捨て印を何気なく押しておいたために、あとで知らない間に契約内容を書き換えられてしまうという危険性もあり得ます。捨て印の欄には本人の印鑑が押してあるので、書き換えられた契約書は、本人の意志で作成されたものと見なされてしまいます。

委任状においても、代理人の名前、委任事項を確認して署名と印鑑の捺印を行った場合でも、「捨て印」の欄があり印鑑を捺印してしまうと、委任事項の書き換えられてしまっても、契約書の場合と同じように、本人の印鑑が押してあるので、書き換えられた委任状は、本人の意志で作成されたものと見なされてしまいます。言うなれば、捨て印を捺印した委任状は、白紙委任状と変わらないものになってしまいます。

このように、「とりあえず捨て印の欄にも印鑑を」と言われたので、「たかだが訂正印」と思い何気なく押してしまいがちですが、とんでもない事になる可能性は充分にあります。

捨て印を押した場合、これ以上の訂正箇所がないとしたら、捨て印は消すようにしましょう。「不要な印鑑は押さない」に越した事はありません。

2009年4月10日

白紙委任状の怖さ

「白紙委任状に印鑑を捺印するのは危険だ」ということは、皆さんご存じだと思います。しかし土地の地目変更や売買などの慣れない手続きを第三者(代理人)に依頼した場合に「白紙委任状に印鑑を捺印したばかりに・・・」とか「白紙委任状を信用してあずけたのに・・・」と、後悔したという例は多くあります。
「白紙委任状に印鑑を捺印し、あずける」という行為が危険だとは知りながらも、その行為にどういう意味があるのかを正しく理解していないために起こった事例です。


委任状とは、代理人に何かをしてもらう場合に、代理人が正当な代理権をもっていることを証明するためのに用意するものです。ですので代理人と取り引きする相手側も、委任状をみて信用して手続きを行ないます。委任状には代理人の名前と、委任事項(委任する事の内容)を記入して、委任を依頼する人が署名と印鑑の捺印をする決まりになっています。
白紙委任状とは、場合によって代理人の名前と、委任事項が記入されずに、委任を依頼する人の署名と印鑑の捺印のみがある委任状の事を指します。

以上から「白紙委任状をあずけた」と言う行為は、白紙委任状を受け取った人が「代理人の名前と、委任事項をあとから書き入れる事を承知した」という事になります。白紙委任状を受け取った人が依頼したとおりの内容を書き入れて使う場合には、何も問題はありませんが、依頼した内容と異なる内容を書き込まれ使用され、大きな不利益を受けると事例があります。


良く白紙委任状を悪用される例として
Aさん(あなた)がBさんの土地を買う事を決め、手続きに不慣れなので、代理人Zさんに白紙委任状と印鑑証明書を渡した。
代理人ZさんはAさん(あなた)に無断で白紙委任状に「Aさん(あなた)の買った土地の売却を委任する」と委任事項に書き込み、Bさんから買った土地をCさんに売却してしまい、移転登記も済ませてしまった。売却して受け取ったお金も代理人Zさんが使ってしまった。

この話の場合、Aさん(あなた)が事情を知り、Cさんに「代理人Zさんが白紙委任状を悪用したので土地を売却する気はなかった」と取り引きの無効を申し立てしても、Cさんは「Aさん(あなた)の実印が押してある委任状と印鑑証明書をもつ代理人Zさんを信じた」と主張されると、Cさんに落ち度はありません。「代理人Zさんが白紙委任状に勝手に委任事項を記入した事をCさんが知っていた」場合を除いては、裁判になっても土地を取り戻す事はできません。

このように、信用している人にでも、白紙委任状をあずけるという行為は、非常に危険な行為です。代理人に何かを依頼する時は、委任状に「代理人の名前と、委任事項の記入」をして、内容を良く確認してから、あずけるようにしましょう。



白紙委任状を安心してあずけられるケース

「白紙委任状は危険だ」とお知らせしてきましたが、白紙委任状をあずけなければ用が足りないという例もあります。司法書士や弁護士の先生に代理人を依頼する場合、先生の方から説明があり、委任状の文面を確認してから署名と印鑑の捺印をする事の方が多いようですが、何かの理由により、委任事項の項目に何を記入して良いか分らず、後で司法書士や弁護士の先生に書き入れて頂いた方が誤りがなく円滑に事を運べるような場合、白紙委任状をあずけるといったこともあるようです。
上記のように、何らかの手続き代行を職業として行なっている人(会社)に代理人を依頼する場合は、失職の危険を冒してまで白紙委任状を悪用しすることは、まず考えられませんので、安心してあずける事ができます。

2009年4月 9日

印鑑(実印)の事件・事故を防ぐ為に

印鑑登録は、住民登録をしている役所で行ないます。登録したい印鑑を持参して行き、登録が済んで初めて「実印」と呼べる様になります。役所では、登録申請者が本人であることを確認してから印影を登録します。以前は印鑑登録が済み、印鑑証明書の交付を求めるときには、登録した印鑑を持参する様式でしたが、現在では印鑑登録を済ますと登録番号の記載されている印鑑登録証(印鑑登録カード)が発行され、そのカードを持参すると印鑑証明書の交付が求められるようになりました。
印鑑登録カードを持参するシステムでは、他人にはどの印鑑が実印であるかが分りませんので、以前のシステムに比べ格段に安全性が向上しました。


以前にも紹介しましたが、「実印の印鑑捺印と、印鑑証明書の添付は本人である事の証明」です。

印鑑証明書は、委任状があれば代理人でも交付の申請が可能です。委任状への印鑑は三文判で充分ですので、委任状を偽造して、印影がコピーされている印鑑証明書を取得し、そこから実印を偽造するという犯罪も可能です。こういった犯罪行為は、以前の実印を持参するシステムでは、実印の管理をしっかりしておくと防げたのですが、現在のカードを持参するシステムでは、印鑑登録カードの管理もしっかりとしておかなければなりません。実印と印鑑登録カードは別々に保管して、しっかりと管理しておきましょう。


印鑑登録は、各市区町村の役所によって多少異なりますが、印鑑登録に際しての本人確認は、写真付きの身分証明書(運転免許証・パスポートなど)での確認を行なうなど、慎重に行なわれ、登録する印鑑にも規定を設けています。(参考


実印、印鑑登録カードを紛失した際は、すぐに印鑑の廃止届けを印鑑登録してある役所に提出し、新しい印鑑での登録をし直す事が必要になります。また、引っ越しなどで、他の市区町村へ転出する際は転出前の印鑑登録が無効になります。新しく転入した市区町村の役所で登録をやり直します。新しく別の印鑑で登録をし直す場合は改印の手続きを行ないます。

何度も言いますが、実印はあなたにとってとても重要な印鑑です。事件や事故、犯罪に巻き込まれてからでは遅いです。取り扱いには充分注意して、保管も、捺印も、気をつけて行なって下さい。


2009年4月 8日

会社の実印とは?

会社の実印は代表者印とも呼ばれる印鑑です。会社設立の際、法務局に会社代表者の印鑑として届け出たものです。個人の実印の場合、登録や印鑑証明書の取得などすべての申請は市区町村の役所にて行ないますが、会社代表者の実印(代表者印)の場合、すべての申請は法務局で行ないます。
法人と認められていない場合は、その会社名での登記や、契約ができません。そこで会社は法律で「法人」とする事が決められています。法人登録することによって、様々な契約、登記が会社名で行う事ができます。
通常、会社代表者印は外丸に会社名、内丸に代表者の役職を彫刻します。法律上は「登記の申請書に押印すべき者は、あらかじめその印鑑を登記所に提出しなければならない」「法に規定により、印鑑を登記所に提出した者は、手数料をおさめて印鑑証明書の交付を請求することができる」とあり、印鑑の規定については言及がありません。個人の印鑑の形式で彫刻してある印鑑(姓名、姓、名)での登録も可能です。登記所に届け出た印鑑で印鑑証明を取得できる印鑑が「会社代表者の実印」になります。しかし、個人の実印や銀行印など他の印鑑と見分けを付けるため、また、会社の実印で判断材料にされる事もあるため、通常どおり外丸に会社名、内丸に代表者の役職の形式で作成した方がよいでしょう。

2009年4月 7日

実印と印鑑証明書について

以前にも紹介しましたように、実印とは「役所に印鑑登録してある印鑑」の事を指します。印鑑登録は、本人または本人の委任状を持つ代理人によって行なう規則になっています。その為、実印は「本人であることの証明」として、最も重要視される印鑑になります。 実印での取り引き

不動産の売買、登記
実印での印鑑捺印が必要になります。登記に関しては法律上でも「所有権の登記名義人が登記義務者として登記を申請するときには、その住所地の市町村長または区長の作成したる印鑑の証明書を提出すべし」と規定されています。この場合の登記義務者とは売り主になります。この登記を行なう事によって、所有の権利を失う人を指します。従って、法律上買い主は認印、三文判での登記が可能ですが、売り主は実印での捺印でなければ登記は受け付けてもらえません。
また、売り主が法定代理人や司法書士などの代理人に登記手続きを依頼する場合にも、委任状には本人の実印を捺印しなければなりません。

公正証書の作成
公正証書とは、法律の専門家である公証人が公証人法・民法などの法律に従って作成する公文書です。人違いでない事を証明するために印鑑証明書が必要になり実印での印鑑捺印が必要になります。
文書に押されている印鑑がその人に間違いないと証明された場合、その文書は本人の意志で作られたものと認められます。押されている印鑑が実印の場合には、印鑑証明書の添付などにより証明は容易にできるので、訴訟になった場合でも実印の捺印してある文書は強力な証拠となります。

このように、実印の捺印と印鑑証明書はセットで使用されます。実印の捺印のみ、印鑑証明書の添付のみ、ではトラブルの元となります。実印を押す際には印鑑証明書を添付して、実印を捺印する際には充分注意をして捺印しましょう。

2009年4月 6日

印鑑の呼び分け

印鑑の呼び方は「はんこ」「印形」「印顆」「印」「印判」「判」「印章」「印鑑」「印影」などと様々な呼び方が存在します。
またゴム印を「はんこ」と呼ばれる方もいらっしゃると思います。厳密な呼び分け、使い分けはむずかしい様です。


正しい呼び分けは
「印形」「印顆」  はんこその物を指します。
「印影」  はんこを捺印(押して)できた形を指します。
「印鑑」  印影の一種で、何かに届出(役所・銀行・登記所)している特定の印影を指します。
「印章」  印形、印顆と同じく、はんこそのものを指します。


このとおりに行くと「印鑑を作る」と言う事は「届出している印影を作る」という不可能な事になってきます。
また法律でも「印章偽造罪」というものがあり、この印章の意味は、印影としても使われています。

このはんこの呼び名を正確に使うと、「印鑑の通信販売」と言うのもおかしな言葉になってきますが、光宝堂では皆さんが日常生活での一番多い呼び名と思い「印鑑」という言葉を使用してます。ご了承下さい。


2009年4月 3日

三文判とは何か?

三文判という言葉を辞典で調べると「出来合いの安価な印鑑」と言うような意味で説明されています。辞典の解説どおり文房具店やホームセンター、100円ショップなどで安価に売られている出来合いの印鑑を「三文判」と呼んでいます。この安価な三文判はどこの家庭にも2~3本は存在していて、ちょっとした認印代わりによく使われていると思います。法律的にも《実印での捺印》と指定がない場合の印鑑捺印では、三文判で用が足りてしまう事も多くあります。
「三文判で結構です」という事から、「そこまで重要事ではない」と思いこみ、印鑑を捺印してしまい、重大な損失を負うという話も良く耳にします。
なにかの契約をする際に三文判を押しても契約は契約になります。保証人の欄に三文判を捺印すると保証人の責任を負う事になります。法律的にいっても、三文判だからといって印鑑を押した以上は逃れる事はできません。


取り引きを行なう際に
三文判で良い場合は、その場で取り引きが済み、後に問題が残らない時が多いです。
例としては、商品の現金売買で商品の受領書と金銭の領収書を交換する際などになります。
三文判で問題がおこる場合は、将来的に行なう契約が多いようです。
例としては、○年△月◇日までに返金する。などになります。

将来的に行なう契約の場合に、その内容どおりに行かなかった時に、裁判にかけてでも契約を実行させなくてはいけない。そんなときに契約書に押してある印鑑が三文判の場合は、問題が難しいものになってしまう事が多いようです。
裁判で「契約した覚えがない」と主張された時に、契約書にサインと印鑑の捺印を行なったという証明をしなくてはなりません。この印鑑の捺印が大量生産品の三文判の場合、同じ印影が大量に出回っているので、「勝手に押した印鑑だ」と言われてしまった時に、その事実を証明をするに時間と費用がかかり難しいものになってしまいます。
こういったトラブルに巻き込まれないように、重要な契約をする際には、三文判での捺印を求めずに、印鑑証明書を合わせた実印での捺印を求めましょう。

2009年4月 2日

印鑑の法的責任について

日本では産まれた時の「出生届」に始まり「婚姻届」「死亡届」など役所に提出する届出には、たいてい印鑑の捺印が必要になります。また、銀行預金や郵便貯金に預金通帳を作る際やお金の出し入れ(金額が多い場合)にも印鑑は必要になります。さらに、宅配便を受け取る時、書留を送る時、受け取る時、商品購入の契約時など、印鑑を捺印する機会は数多くあります。
以上のケースは印鑑を捺印した事によって法律的に、意味のあるケースになります。



また、法律的な意味を持たない印鑑の捺印もあります。
様々な通知の書類を閲覧したという確認の印鑑、子供の成績表にも先生、父母が押す印鑑捺印欄があり、現在流行している落款印を書画、絵はがきに捺印すると言う物もあります。


以上のように「印鑑を捺印する」という行為は生活の中に密着しています。「印鑑証明書」を付けて実印を捺印す場合以外では、印鑑を押す事の法律的な意味を考えずに、気軽に印鑑を捺印してしまう方も多いのではないでしょうか?
そのことから、書類の中身を確認せずに印鑑を捺印して後に重大な責任を負ってしまったり、保証人の印鑑を捺印した事によって自分の借金ではないお金を支払うハメになったり、など気軽に捺印した印鑑が大事になるケースも数多くあります。


次回から印鑑を捺印した事でのトラブルを未然に防ぐため、正しい印鑑の知識を配信して行きたいと思います。

2009年4月 1日


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